2026.07.25 | AI モデル

Artificial Analysis の見方

新しい AI モデルの発表が続くなかで、「今回出たこれは、結局どういうモデルなのか」を毎回ゼロから調べるのは現実的ではありません。 Artificial Analysis は、 世に出ているモデルを同じ条件で測り直し、賢さ・速さ・コスト効率の座標のどこに立っているかを見せてくれるサイトです。 実際の画面を貼りながら、その座標の読み方を解説します。

このページの要約図。見る軸は「賢さ(9 つの試験の総合点)」「速さ(出る速さと待ち時間)」「コスト効率(1 タスクいくら)」の 3 つ。見る順番は、散布図で立ち位置を見る → モデルの性格を読む → 自分の領域の試験を見る。おぼえることは、賢さ・速さ・コストは同時に手に入らない/値段は単価ではなく 1 タスクで見る/総合 1 位が全部門 1 位ではない/結論には必ず日付をそえる。モデルは「とにかく賢い」「バランス」「効率重視」「速さ特化」の 4 タイプ。この数字が答えないのは、サブスクでどれだけ使えるか・自分の仕事での賢さ・来月の順位
このページの全体像。3 つの軸・見る順番・モデルの 4 タイプ・注意点を 1 枚にまとめたもの

このサイトは「どれを買うか」を決めるより、「そのモデルが何者か」を確かめるのに向いています。新しいモデルが出たとき、あるいは 2 つのモデルで迷ったときに開いて、今使っているモデルとの位置関係を見る。持ち帰るのはモデル名ではなく、この見方のほうです。

Artificial Analysis とは — モデルの座標を見るサイト

Artificial Analysis は、世界中の AI モデル(ChatGPT の中身の GPT シリーズ、Claude、Gemini など 586 モデル)を、独立した第三者が同じ条件でテストして比較している無料サイトです。 モデルを作っている会社の自己申告ではなく、運営が自分たちで毎日測り直しているのが信頼される理由です。

トップページを開くと、いきなりこのサイトの結論にあたる 3 枚のカードが出てきます。

Artificial Analysis トップページのハイライト。Intelligence・Speed・Cost per Task の 3 つのチャートが並ぶ
トップページの Highlights(2026-07-25 時点)
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この 3 枚が示しているのが、サイト全体を貫く3 つの軸です。軸ごとに見るチャートが違い、それぞれに引っかかりやすい落とし穴があります。

軸① 賢さ
Intelligence Index
9 種類の試験をまとめた総合点(v4.1)。偏差値のような総合学力
落とし穴 総合点が高い=自分の用途で最強、ではない
軸② 速さ
Output Speed
1 秒あたりに出てくる量。長文生成で効く
Latency
答えが出始めるまでの待ち時間。対話の体感速度
落とし穴 「出る速さ」と「待ち時間」はまったく別の指標
軸③ コスト効率
Cost per Task
試験を 1 問解かせたときの平均実費(USD)
Output Tokens per Task
1 問あたりに書く量=おしゃべり度
落とし穴 単価(100 万トークンあたり)では比べられない

新しいモデルが出てきたときの見方

軸の中身に入る前に、実際にこのサイトを開いたときの手順を先に示します。 このあとの各章は、この 3 ステップのどこかを詳しく説明したものだと思って読んでください。

モデルの立ち位置を把握する 3 ステップのフロー図。散布図で立ち位置を見る、モデルの性格を読む、自分の領域の試験だけ見る。各ステップで見るチャートを右側に併記
新しいモデルを見るときの順番。右列がそのステップで開くチャート

軸① 賢さ — Intelligence Index

いちばん目立つ数字が Intelligence Index です。Artificial Analysis が独自に行う 9 種類の試験の結果を 1 つにまとめた総合点で(2026 年 7 月時点のバージョンは v4.1)、 試験の中身は実務っぽい作業・銀行業務のシミュレーション・プログラミング・科学の難問など多岐にわたります。 ざっくり「偏差値のような総合学力」と捉えれば OK です。

Artificial Analysis Intelligence Index のランキングチャート。Claude Opus 5 が 61 で首位
Intelligence Index v4.1 ランキング(2026-07-25 時点)
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Intelligence Index は試験内容が定期的に改訂されます(v4 → v4.1 など)。バージョンが変わると全モデルの点数が変わるので、昔の記事の数字と今の数字を直接比べてはいけません

軸② 速さ — 「出る速さ」と「待ち時間」は別物

速さの指標は 2 つあります。1 つ目は Output Speed(1 秒あたりに何文字ぶん出てくるか、tokens/s)。 長い文章を書かせるときはこれが効きます。

Output Speed のランキングチャート。Gemini 3.5 Flash-Lite が 436 tokens/s で首位
Output Speed(2026-07-25 時点)
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2 つ目が Latency(質問してから答えが出始めるまでの待ち時間)。 チャットで使ったときの「体感の速さ」はほぼこれで決まります。 考えてから答える reasoning モデルは、この「考えている時間」が待ち時間に丸ごと乗ってきます。

Latency(最初の回答トークンまでの秒数)のチャート。思考時間込みで最大 223.5 秒
Latency: Time To First Answer Token(2026-07-25 時点)
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軸③ コスト効率 — 単価ではなく「1 タスクいくら」で見る

AI の料金表は普通「100 万トークン(≒文字量の単位)あたり何ドル」という単価で書かれています。 ところが reasoning モデルは考えごとを大量に書き出すので、同じ仕事をさせても使う文字量が全然違う。 単価が安くてもたくさん喋るモデルなら、実際の請求額は高くつきます。

そこで Artificial Analysis は「賢さ試験を 1 問解かせたら実際いくらかかったか」= Cost per Task を出してくれています。コストはこの数字で比べるのが正解です。

Cost per Intelligence Index Task のチャート。DeepSeek V4 Flash の $0.02 から Claude Fable 5 の $2.75 まで
Cost per Intelligence Index Task(2026-07-25 時点)
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「どれだけ喋るか」自体も Output Tokens per Task というチャートで確認できます。 同じ試験を受けさせて、少ないモデルは 1.2 万トークン、多いモデルは 6.9 万トークン。 この「おしゃべり度」の差が、そのままコストと所要時間に効いてきます。

Output Tokens per Intelligence Index Task のチャート。モデルによって 12k から 69k トークンまで差がある
Output Tokens per Task。「おしゃべり度」はモデルで約 6 倍違う(2026-07-25 時点)

ここに出てくる金額は、API を従量課金で使ったときの単価から計算された数字です。月額のサブスクリプションで使う場合の「どれだけ使えるか」とは直接は対応しません(詳しくはこの数字が答えないこと)。まずはモデル同士の倍率を見る物差しとして読んでください。

立ち位置を読む — 賢さ × コストの散布図

3 つの軸を押さえたら、モデルの立ち位置を一目で見るための散布図に進みます。 縦軸が賢さ、横軸が 1 タスクあたりのコスト(右に行くほど高い)。 つまり左上にあるモデルほど「賢さのわりに軽い」ことになります。 サイトも左上を「Most attractive quadrant(一番おいしい領域)」として緑色で示しています。

Intelligence Index と Cost per Task の散布図。左上の Most attractive quadrant が緑色で示されている
Intelligence Index vs. Cost per Task(2026-07-25 時点)
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そもそも「Task」とは何か

横軸の名前に出てくる Task は、Intelligence Index を構成する試験の 1 問のことです。 サイト側の定義では、各試験にかかった費用やトークン数を問題数で割り、Intelligence Index での重みで平均しています。 つまり Cost per Task が $2.03 とは「この試験を 1 問解かせると平均 2.03 ドル」という意味で、 モデルを 1 回呼ぶたびの料金でも、ベンチマーク全体の総額でもありません。

散布図は 3 種類ある — でも入口は 1 つでいい

散布図のタブを切り替えると、縦軸(Intelligence Index)はそのままで横軸だけが違う 3 種類が出てきます。 名前が似ていて紛らわしいのですが、3 つは独立した指標ではなく、1 つの原因の言い換えです。

3 つの散布図の関係図。Output Tokens per Task を原因として、トークン単価を掛けると Cost per Task、Output Speed で割ると Time per Task になる
横軸違いの 3 枚は、Output Tokens を「お金」と「時間」に換算したもの

おおもとは Output Tokens per Task、つまり「そのモデルが 1 問にどれだけ書くか」です。 これにトークン単価を掛ければ CostOutput Speed で割れば Time になります。 だから 3 枚を見比べても、多くの場合は同じ傾向が形を変えて出てくるだけです。

Time per Task は「待ち時間」ではありません。定義上、最初の 1 文字が返るまでの時間(TTFT)を除いた、書き出しにかかった時間だけを指します。軸②で見た Latency(Kimi K3 が 3.7 分待つ、というあの数字)とは別物です。対話の体感速度を知りたいなら Latency、長い出力を待ち切る時間を知りたいなら Time per Task を見ます。

総合点だけでは見えないこと

用途を変えると順位が入れ替わる

Intelligence Index は 9 試験の平均なので、用途別に見ると順位が変わります。 ページを下にスクロールすると試験ごとの内訳(Intelligence Evaluations)があり、 総合 1 位の Claude Opus 5 が事務作業(GDPval-AA v2)とターミナル操作(Terminal-Bench v2.1)では 1 位を取る一方、 ツールを使う銀行業務(τ³-Banking)では Kimi K3 が 1 位、という具合です。

試験別の内訳チャート 4 種。GDPval-AA v2、τ³-Banking、Terminal-Bench v2.1、SciCode で順位が入れ替わる
試験別内訳(抜粋)。総合点では見えない得意・不得意がある(2026-07-25 時点)
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同じモデルでも「どこから借りるか」で速さが激変する

オープンなモデル(誰でもホスティングできるモデル)は、同じモデルを複数の会社が配信しています。 モデルが同じなら賢さは同じですが、速さと値段は配信元でまったく違います。 ページ末尾の API Provider Performance で確認できます。

gpt-oss-120b を配信する 19 プロバイダーの速度と価格の散布図
同じ gpt-oss-120b でも配信元 19 社で速度・価格はバラバラ(2026-07-25 時点)
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モデルの 4 つの性格タイプ(2026-07-25 時点)

ここまでの軸で見ていくと、モデルはだいたい 4 つの性格に分かれます。 新しいモデルが出たときも、「どのタイプに属するか」で理解すると早いはずです。 数字はすべて上のチャートの値です。

散布図の右上
とにかく賢いタイプ

Claude Opus 5Claude Fable 5 賢さ 61・60 $2.03・$2.75 /task

最高難度の分析や設計で選ばれる枠。待ち時間も書く量も大きく、コストはそのぶん積み上がります。

散布図の左上(おいしい領域)
バランスタイプ

Grok 4.5Muse Spark 1.1GPT-5.6 Luna 賢さ 54・51・51 $0.31・$0.26・$0.21 /task

賢さ上位の 8 割強を、10 分の 1 前後のコストで出す枠。サイトが緑色で囲っている領域の住人たちです。

散布図の左下
効率重視タイプ

DeepSeek V4 ProMiniMax-M3 賢さ 44・44 $0.04・$0.12 /task

賢さは中位でも桁違いに軽い枠。大量処理や下書き・分類のような仕事と相性がいいタイプです。

Output Speed の上位
速さ特化タイプ

Gemini 3.5 Flash-LiteGemini 3.6 Flash 436・235 tok/s 待ち 8.9・14.9 秒

対話 UI やリアルタイム処理で効く枠。3.6 Flash は賢さ 50 を保ったまま速く、バランスタイプと両属性です。

こうして並べると、「賢さで勝つ」以外にも勝ち方があることが見えてきます。 新しいモデルの発表を見たときは、まずこの 4 つのどこを狙って作られたモデルなのかを考えると、その位置づけが掴みやすくなります。

この数字が答えないこと

最後に、この座標が答えてくれないことを 3 つ挙げておきます。ここを混同すると読み違えます。

1. サブスクで「どれだけ使えるか」は分かりません。 このサイトのコストはすべて API の従量課金を前提に計算されています。 月額プランで使う場合の上限や体感は、提供各社の設計次第なので一対一では対応しません。 「よく考えてたくさん書くモデルほど重い」という大まかな傾向は共通しますが、そこまでです。

2. 自分の仕事での賢さは分かりません。 ベンチマークはあくまで模試です。試験の問題と自分の業務が似ているとは限らないので、 最終的には本番のデータで試すまでが確認作業になります。

3. 来月の順位は分かりません。 このサイトの上位陣は数週間で入れ替わります。実際、この記事を書いている当日にも Claude Opus 5 が公開されて首位が入れ替わりました。 モデル名を覚えるのではなく、座標の読み方を覚えて、そのつど開き直すのが正しい付き合い方です。

まとめ:賢さ・速さ・コスト効率の 3 軸で座標を見る。散布図の位置でモデルの性格を掴み、自分の領域の試験で解像度を上げる。金額は API 従量課金の物差しで、結論には必ず日付を添える。これだけで Artificial Analysis は読めます。


本ページのスクリーンショットはすべて Artificial Analysis より 2026 年 7 月 25 日に取得したものです。チャートの数値・順位は日々更新されるため、最新の状況は必ず本家サイトでご確認ください。